【桃太郎】
むかしむかし
ある高規格オートキャンプ場で、お爺さんとお婆さんが長期キャンプをしていました。
お爺さんは、連泊で薪代がバカにならないので芝刈り(薪拾い)に行きました。
しかし、さすが一泊6500円の高規格だけあって、場内には薪になりそうな木が落ちていませんでした。
お婆さんは、連泊で溜まった洗濯物を洗いに場内のコインランドリーに行きました。
しかし、高規格といっても所詮キャンプ場。
置いてある洗濯機が小さくて汚いにもかかわらず、料金が高かったので諦めました。
お婆さんは、スマホで「OK Google 近くのコインランドリー」と検索し、キャンプ場近くのコインランドリーに行きました。
お婆さんは、洗濯乾燥70分の間暇でした。
そこで、お婆さんは、キャンプ場内に流れている小川のほとりに座り、老人らしくぼんやりすることにしました。
この小川はキャンプ場のホームページに「夏は水遊びに最適」と書かれていました。
しかし、真夏でもない限り、冷たくて入っていられないため、誰もいませんでした。
お婆さんは一人でたたずんでいました。
ババア『爺さんも歳をとったもんだ。ヘキサタープひとつ張るのに30分もかかるなんて・・・。』
ババア『しかもテントとの位置を考えずに設営するからポールが邪魔で仕方ないわ。きっと高齢で判断能力が鈍ってるからだな。こりゃ運転免許の返納も考えなきゃいかんなぁ。』
お婆さんが、お爺さんの判断能力の衰えをなげいていると
小川の川上から
大きなスチールベルト(※コールマン製のクーラーボックス)が
どんぶらこ
どんぶらこ
と流れてきました。
ババア『あれまぁ、大きなスチールベルトだこと。新作かしら?それとも中華製?』
お婆さんは川からスチールベルトを拾い上げサイトに持ち帰ることにしました。
お婆さんがサイトに着くと、
お爺さんが何とか拾い集めた小枝で、しょんぼりと焚き火をしていました。
お婆さんがお爺さんと早速スチールベルトを開けてみると、
中には、LOGOSの氷点下パック−16℃の保冷剤と
数本の缶ビール。
それと、玉のような赤ちゃんが入っていました。
ジジイ『あれまぁ、赤ん坊でねえか。』
ババア『さすがスチールベルトと氷点下パック!キンキンに冷えてやがる。』
お爺さんとお婆さんは、キンキンに冷えた缶ビールと、キンキンに冷えた赤ん坊を取り出しました。
そして、二人で缶ビールを飲みながら、赤ん坊を焚き火のそばで暖めてやりました。
キンキンに冷えていた赤ん坊の体は徐々に温まりました。
そして、温まるにつれて、赤ん坊はグングンと成長していき、
二人が缶ビールを飲み終えるころには小学6年生ほどの大きさに成長しました。
ジジイ『これはどういうことじゃ。』
ババア『爺さん。きっとこの子は子供がいない私たちに、神様が与えてくださったんじゃ。』
ジジイ『そうじゃ。キャンプの神様が夫婦でのキャンプを卒業して、そろそろファミリーキャンプをしろと言うとるんじゃ。』
二人は赤ん坊に名前を付けることにしました。
ジジイ『スチールベルトから産まれたから、スチールベルト太郎?』
『それともクーラーボックス太郎かのう?』
ババア『語呂が悪い!』
ジジイ『じゃあ、桃太郎で!』
ババア『うん、桃太郎で!』
こうして、桃太郎と名付けられた少年は、二人の子供として一緒にキャンプすることになりました。
お爺さんは管理棟に行き、人数が増えたことを管理人に伝え、子供料金を支払いました。
お爺さんがサイトに戻ると、桃太郎とお婆さんがもめていました。
ババア『桃太郎!今なんて言ったの?どこに行くって!?』
桃太郎『鬼退治です。おばさん。』
ババア『おばさんって・・・。』
桃太郎『失礼しました。お姉さん。』
ババア『いや、そうじゃなくて・・・。』
『ほら、あなたは私たちの子供になったんだからさ、ほら、他人じゃないって言うか、親って言うか。』
桃太郎『そうですね。おかあさん・・・。』
ババア『そうそう。おかあさんだよね。まぁ歳も歳だからママって言うのは無理があるかなぁ。』
『でも、私はママって呼んでもらっても構わないんだよ。』
桃太郎『じゃあ、ママ。僕はこれから鬼退治をしに鬼ヶ島へ行ってきます。』
ババア『あら、そう。行ってらっしゃい。』
ジジイ『イヤ、待て待て。』
『どこに行くって?』
『鬼ヶ島?』
『鬼退治?』
桃太郎『このキャンプ場の端にあるOサイトで、マナーの悪いキャンパーがいるらしいんです。』
ジジイ『で?』
桃太郎『そのキャンパー達を懲らしめに行くんです。』
ジジイ『それが何で鬼ヶ島と鬼退治になるの?』
桃太郎『だって桃太郎ですから。』
こうして、桃太郎はキャンプ場の端にあるOサイトへ、マナーの悪いキャンパー達を懲らしめに行くことになりました。
続きを読む前にポチッとしていただけると嬉しいです。
→続き