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rakujirou.hatenablog.com
電話
ハンモックでくつろいでいる所にかかってきた一本の電話。
急に休んだ職場からの電話だと思った。
何かトラブルがあったのかもしれない。
それとも家からか。
数年前にソロキャンプに出かけた【あの時】の記憶が蘇る。
今回が『ほぼ初めて』のソロキャンプだとすれば、数年前の【あの時】は『本当に初めて』のソロキャンプのチャンスだった。
あの時
数年前、私は意気揚々とキャンプ場へ向かっていた。
今回と同じく滋賀県でのキャンプの予定だった。
子供の用事があったため、私は一人で前乗りしてソロキャンプを楽しみ、翌日妻と子供が合流する計画だった。
名古屋インターから高速に乗り、5分ほど経った時、家から電話がかかってきた。
子供が熱を出したとの報告だった。
自分一人でそのままキャンプ場に向かうという選択肢などなく、次の春日井インターで降りて帰ったのだった。
出発して30分ほどで終わってしまった。
短く切ないソロキャンプの旅だった。
受電
電話が震えているほんの数秒の間に、仕事で起こりうるトラブルの予測と戻らなくてはいけないケースの想定や、【あの時】の悲しい記憶が頭の中を駆け巡る。
それらは電話を取る私の手を止める様に働きかける。
しかし、電話に出ない訳にはいかない。
なぜならば、キャンパーである前に大人なのだから。
『大人だから』
『大人でしょ?』
嫌な言葉だ。大嫌いだ。
好きで大人になったわけじゃない。
ピーターパンだけズルいと思う。
ただ、私は自分がピーターパンでもなければ、マイケル・ジャクソンでもない事を知っている。
もし私がピーターパンなら、ソロキャンプ中に職場や家からの電話で「帰って来い」と言われても、『へへん』とか言ってケータイを壁に投げつけて無視するだろう。
もし私がマイケル、いやマイコーなら、電話に激昂し、日本中の高野豆腐を買い占めて琵琶湖に放り投げ、湖の水を全て吸い取る嫌がらせをするだろう。
しかし、私はマイコーではない。ただのピーターパン症候群のおっさんだ。
それが分かっているから電話に出なければならない。
覚悟を決めて恐る恐る電話に出た。
『あ〜もしもし。知内浜キャンプ場の受付ですが、お邪魔してすいません。〇〇さん、どこのサイトにしました?』
相手はキャンプ場の管理人だった。
こちらの覚悟を知らない管理人が明るく話しかけてくる。
『何番のサイトをご利用ですかね?』
「えっ、言われたサイトですけど」
『あぁ、そうですか。どうもお邪魔しました。ごゆっくり。』
電話は切れた。
チェックインの時に、一応サイトの指定はされたが、空いているから好きな所を使って良いと言われていた。
どうやら他の利用者が来たため、私の使っているサイトを確認したかったようだ。
体温計といい、電話といい、頼んでもないアクティビティで驚かせてくれるキャンプ場だ。
夕食
一人の夕食は何をどう食べようが自由だ。
マイコーでも俺を止める事はできない。
いや、マイコーなら可能か。
とりあえずマイコーは周囲に居なかったので肉を焼き
ネギを焼き
食べた。
一人で思う存分焚き火を堪能した。
それでも時間はいくらでもある。
ただ、時間はあってもやる事はない。
ゆるキャン△でリンちゃんがしてる様に本でも持ってくればよかった。
結局、暇を持て余し、Amazon primeビデオで前から気になっていたアニメを一気に観た。
当然の様にカブが欲しくなった。
翌朝
コーヒーを飲み
朝食を作って食べる。
撤収
『ほぼ初めて』のソロキャンプを満喫した。
大満足だ。
琵琶湖の景色が名残惜しいが撤収の時間だ。
ソロキャンプの道具をハイエースに積み込むのだから、どうやって載せたって載る。
オーバースペックも甚だしく、少し人の目が気になる。
(ソロなのにスゴイ荷物だし、ハイエースかよって思われてるんじゃないか?)
しかし、のび太がドラえもんを所有してるのに比べればマシだし、ライオンはウサギを狩るにも全力を尽くすという。
全力を尽くさない大西ライオンにはなるまい。
ただ、やはりハイエースをはじめとした私の装備はファミキャンにこそ活きる。
今度は家族と来ることを心に決めて帰路についた。
エピローグ 『煎餅』
キャンプの神の意思にしたがって出かけたキャンプだった。
でも、本当にそうか?
思い返してみると、あの時『行けば良いじゃん』と言ったのは妻だったのではないか?
いや、絶対に妻だ。
自分の意思では決められなかった平日のソロキャンプ。激しく背中を押してくれたのは妻だったのだ。
子供達には何も言わずに出かけたため、いつも一緒にデュオキャンしている次女が『置いていかれた』と怒っているらしい。
そうだ。家族にお土産を買って行こう。
帰りに高速のサービスエリアでエビ煎餅のお土産を買った。
しかし、数日経っても、そのお土産には誰も手をつけていなかった。
おしまい。
※今回の【高野豆腐】に関する記述は、えびかにさんとYama campさんのアドバイスによるものです。
流石に人気のあるキャンプブログを書いている方達です。発想が違いますね。
ありがとうございました。