キャンプ日本昔話【かさ地蔵】
キャンプ日本昔話
かさ地蔵
むかし、むかし
ある湖のほとりに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は元々布団を作っていましたが、アウトドア好きが高じて、布団から寝袋を作り町に売りに行く事を生業としていました。
二人の作る寝袋はとても暖かく、キャンパーから絶大な信頼を得ていました。
しかし、品質へのこだわりが強く、特に羽毛に対して一切の妥協を許さない徹底ぶりから、儲けはごくわずかしかなく、二人のくらしはとても貧しいものでした。
ある年の大晦日、おじいさんは雪の中、寝袋を売りに町へと出かけました。
しかし、キャンパー達は皆んな年越しキャンプに出かけていたため、ひとつも売れませんでした。
吹雪になりそうだったので、おじいさんは寝袋を売ることをあきらめ、家に帰ることにしました。
吹雪の中の帰り道、おじいさんは6体のお地蔵さまを見つけました。
お地蔵さまは雪をかぶって、なんとも寒そうです。
「これはこれは、お地蔵さま。こんなに雪をかぶってさぞ寒いでしょう。この寝袋を使ってください。」
おじいさんはそう言うと、売るはずだった寝袋の中にお地蔵さまを入れてあげました。
寝袋には色んな種類がありました。
一人目のお地蔵さまには、3シーズン使用できる【オーロラ500】
二人目のお地蔵さまには、フラッグシップモデルの【オーロラライト 450 DX】
三人目には、羽毛本来の機能である吸湿放湿性を併せ持つ【UDD バッグ 450】。
羽毛に超撥水加工を施している点が大きな特徴だ。
四人目は【オーロラライト 750 DX】
優れた撥水性と透湿性を持つオーロラシリーズの中で一番暖かなモデル。国内のほとんどの厳冬期環境で使用可能な高機能モデルだ。
快適温度は-8℃のため、お地蔵さまも少し暑く感じるかもしれない。
五人目には【RABAIMA BAG W 600】
寝返りの多いお地蔵さまには、ゆとりある封筒型シリーズのラバイマをチョイス。
Wは幅140cmもあるから、一緒に寝たがる子供がいるお地蔵さまにもピッタリなんです。
ところが…
最後のお地蔵さまの分がひとつ足りませんでした。
そこでおじいさんは自分が着ていたダウンジャケットを着せてあげました。
『ラバイマ バッグ Wにお地蔵さま二人で入るなんて可哀想だし、コレで我慢してください。』
家に帰ったおじいさんは、お地蔵さまに寝袋をあげた事をおばあさんに話しました。
おばあさん
『オージーゾーさん?』
『オーストラリアにゾウさんはいないでしょ?ボケたの?』
おじいさん
『地蔵だよ。地蔵。あの、石を掘って作るヤツでさ、道端によく突っ立ってるヤツあるじゃん。』
おばあさん
『あっ、地蔵ね。その石の地蔵に寝袋をあげたのね。』
おじいさん
『そうそう。石の地蔵が寒そうだったから、売り物の寝袋をあげちゃったんだよ。』
おばあさん
『・・・・・。そっか、石の地蔵に・・・・・。』
『でも、それは良いことをしたね。おじいさん。きっとお地蔵さまの御利益で、来年こそは商売も上手くいくようになるよ。うん。きっとなる。ならなきゃおかしい。おかしいよ。ホントどうかしてる。ホントどうかしてるんじゃないの。』
と、とても喜びました。
その晩のこと・・・
おじいさんとおばあさんが【オフトン】で寝ていると、
遠くの方から、ズザザー、ズザザーと、何かを引きずる様な音が聞こえてきました。
おじいさんとおばあさんはそっと外をのぞいてみました。
すると、雪の中を、寝袋を着たお地蔵さまが重そうな荷物を引っぱりながら歩いてきます。
いや、よく見ると歩いているのではなく、芋虫の様にクネクネと這って近づいてきます。
一番後ろのお地蔵様はおじいさんのダウンを着ていました。
『親切なおじいさんの家はどこじゃ。寝袋をくれてありがたい。親切なおじいさんの家はどこじゃ。寝袋をくれてありがたい。」
音と声はだんだんと大きくなって、おじいさんの家の前まで来ると、お地蔵様は大きな荷物を置き、また雪の中へ帰っていきました。
おじいさんとおばあさんは、お地蔵様がいなくなると家の戸をあけてみました。そこには、米俵が六つ置いてありました。
こうして、二人は楽しいお正月をむかえることができました。
次の年の大晦日。
おじいさんとおばあさんが家で紅白歌合戦を軸としたザッピングをしていると、遠くの方からズザザー、ズザザーという聞き覚えのある音と、声が聞こえてきました。
『寝袋に難があるぞ。羽毛の量が足りない。』
『寝袋に難があるぞ。羽毛を増やしてもらいたい。』
『寝袋に難があるぞ。羽毛がペチャンコで寒い。』
去年の大晦日に寝袋をあげたお地蔵さま達でした。
お地蔵さま達は、一年経って減ってしまった羽毛の量を増やして欲しいようです。
つまり、お地蔵さま達は、羽毛のカサを増やす様に要求してきたのでした。
地蔵がカサを…。
おじいさんは、お地蔵さまの頼みとあらば断るわけもなく、羽毛のカサを増やしてあげました。
その後、『お地蔵さまにだけ羽毛を増量をして他のユーザーにしないのはおかしいのではないか』と揉んだ結果、有料であるものの羽毛の増量をする事と、全ての寝袋を永久保証にする事を決定しました。
そして、お地蔵さまからの『難がある』という理不尽なクレームに応えた事を職人としての誇りとし、個人経営から法人化するに伴って社名を【難が】とする事に決めたのでした。
こうして出来た会社を、おじいさんとおばあさんは日本有数のシュラフメーカーに成長させ、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。